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潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎とは、直腸から上のほう(口側)に炎症が連続的に広がっていく病気です。
10〜30歳代の若い人に発症することが多く、初期症状として、血便、粘液便(ねばねばした便)、下痢、腹痛などがあります。
原因には、ストレスが大きく関与しています。

病状が悪い時期(活動期)と落ち着いている時期(寛解期)を繰り返すのが特徴であり、残念ながら完治させることはできません。
そのため、潰瘍性大腸炎は国が特定疾患(いわゆる難病)に指定している病気です。
難病ではありますが、決してまれな病気ではなく、右肩上がりに増加しています。

清潔な環境で、ストレスを多く伴う日本では、今後も潰瘍性大腸炎が増加していくことが予想されます。
少しでも疑わしい症状がある場合、まずは消化器内科へ受診しましょう。

潰瘍性大腸炎に関して、なりやすい性格や、おすすめの食事などの細かい情報まで、消化器病専門医・内視鏡専門医・胃腸科専門医・難病指定医である院長が、分かりやすく・詳細に解説していきます。

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は難病で、増え続けています

潰瘍性大腸炎は、クローン病と合わせて、炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)と呼ばれています。

  • 病状が悪い時期(活動期)
  • 落ち着いている時期(寛解期)

を繰り返すのが特徴であり、完全に治ることは難しいため、潰瘍性大腸炎とクローン病は国が特定疾患(いわゆる難病)に指定しています。
潰瘍性大腸炎は、炎症が直腸から連続的に広がっていくという特徴があり、これがクローン病との大きな違いになります。

潰瘍性大腸炎の患者数は、ここ50年間、右肩上がりに増え続けています。
日本では現在、約22万人以上に達していると推察されます。
今後も、潰瘍性大腸炎は増加していくことが予想されます。

難病情報センターより引用

難病情報センターより引用

潰瘍性大腸炎は特定疾患であるため、医療費の一部は国から補助が受けられます。
当クリニックでは、潰瘍性大腸炎の難病申請を行うことが可能です。
お気軽にご相談ください。

潰瘍性大腸炎の原因

今のところはっきりと分かっている原因はありません。
以下の原因が、潰瘍性大腸炎の発症に関与しているとされています。

  • 遺伝
  • きれいすぎる衛生環境
  • 腸内細菌の異常
  • 高カロリーで脂っこい食事
  • 肉体的・精神的なストレス
  • 不規則な生活習慣
  • 几帳面で神経質な性格
  • 薬剤(ピル、NSAIDs)

これらの要因が複雑に関与して、体内で免疫異常が起こり発症すると考えられています。
また、肉体的・精神的なストレスや不規則な生活習慣が原因となり、腹痛や下痢といった症状を再発させてしまうといわれています。

潰瘍性大腸炎になりやすい性格の特徴として、

  • 几帳面で責任感が強い
  • 完璧主義、短気や頑固
  • 神経質な性格

の方に多いとされています。

両親(父、母)が潰瘍性大腸炎の場合、子供が潰瘍性大腸炎になるリスクはやや高いですが、これは遺伝だけではなく、食生活などの他の要因も関係していると考えられています。

また、ピル(経口避妊薬)やロキソニン・ボルタレンなどの痛み止め(NSAIDs)は潰瘍性大腸炎の発症に関与しているとされています。

潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎では、炎症が強くなることで、しばしばびらんや潰瘍が生じます。
その結果、以下のような症状が認められます。

  • 血便
  • 粘血便(ねばねばした便)
  • 下痢
  • 腹痛
  • おなら

典型的な症状としては、血便、粘液便(ねばねばした便)、下痢腹痛などがあり、これらが初期症状としてみられます。
これらの症状が良くなったり(寛解期)、また悪くなったり(活動期)を繰り返すことが特徴です。
また、ストレスにより症状が悪化する傾向があります。

炎症が強くなり、腸の動きが悪くなることで、おならの回数が多くなることもあります。

潰瘍性大腸炎の悪化のサイン

潰瘍性大腸炎の悪化のサインとして、以下の症状があります。

  • 発熱
  • 強い腹痛
  • 1日6回以上の排便
  • だるさ、疲れやすい
  • 体重減少
  • 貧血
  • 動悸、めまい
  • 頻脈

また、粘血便を繰り返すことで貧血や脱水症状が引き起こされ、動悸やめまい、頻脈が生じることもあります。
腸管以外の合併症として、皮膚、関節、眼の症状が出現することもあります。
潰瘍性大腸炎の活動期で症状が強く出る場合、仕事ができなくなるケースも少なくありません。

当クリニックは消化器病専門医ならびに難病指定医であるため、難病申請を行うことが可能です。
また、休職や療養のための診断書なども作成しております。
当クリニックの公式LINEアカウントより、チャット相談なども実施しております。お気軽にご相談ください。

潰瘍性大腸炎を疑うチェックポイント

こちらの潰瘍性大腸炎を疑うチェックポイントに該当する項目がないか、ご確認ください。

このような危険な症状・エピソードを認める場合、なるべく早めに消化器内科を受診しましょう。

このような危険な症状・エピソードを認める場合、なるべく早めに消化器内科を受診しましょう。

潰瘍性大腸炎の合併症

潰瘍性大腸炎の合併症には、①大腸内に起こるものと、②他の臓器におこるものの2つに分類されます。

1.大腸内に起こる合併症 2.ほかの臓器に起こる合併症
  • 穿孔
    (腸に穴があくこと)
  • 中毒性巨大結腸症
  • 狭窄
    (腸のなかが狭くなること)
  • 大腸がん
  • サイトメガロウイルス腸炎 など
  • 皮膚:
    壊疽性膿皮症、結節性紅斑
  • 関節:
    強直性脊椎炎、末梢性関節炎、多発性関節炎
  • 肝臓:
    原発性硬化性胆管炎
  • 目:
    上強膜炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎
  • その他:
    口内炎、IgG4関連疾患 など

このように大腸以外にもさまざまな臓器に合併症を起こすことが特徴であり、主にみられるのは皮膚病変と関節炎です。

潰瘍性大腸炎の大腸がんリスクは?

潰瘍性大腸炎の方で

  • 10年以上経過している方
  • 原発性硬化性胆管炎を合併している方

は、大腸がんの発生が高まることが知られています。
また、潰瘍性大腸炎に発生する大腸がんは

  • 多発する傾向がある
  • 未分化がん・低分化腺がんなどの進行の速いがんが多い

という特徴があります。
潰瘍性大腸炎の方の、大腸がん発生のリスク因子を以下にお示しします。

大腸がん発生のリスク要因:

  • 慢性炎症が持続している
  • 10歳〜20歳代で発症している
  • 全大腸炎型・左側結腸炎型の方で、10年以上経過している
  • 原発性硬化性胆管炎を合併している
  • 家族で大腸がんと診断された方がいる

全大腸炎型・左側結腸炎型の方では、8年以上経過している場合、厳重なフォローが推奨されています。
該当する項目がある方は、今まで以上に定期的な大腸カメラ検査を行いましょう。

潰瘍性大腸炎の検査・診断

潰瘍性大腸炎を診断するための検査には以下のものがあります。

  • 血液検査
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
  • 便検査
  • 腹部レントゲン検査
  • 腹部超音波検査(腹部エコー)
  • 腹部CT検査
  • カプセル内視鏡検査

診断には、症状の経過を詳しく聴取することが大切であり、血液検査や大腸内視鏡検査は必須になります。
潰瘍性大腸炎の診断基準は、①症状、②大腸カメラ検査、③大腸粘膜の組織変化の3つをもとに診断が確定されます。
血液検査では、炎症・貧血の度合いや、他の臓器の異常がないかどうかを評価します。

大腸カメラでは、粘膜の状態が

  • 潰瘍性大腸炎として矛盾がないか
  • 炎症が大腸のどの範囲まで及んでいるか
  • 重症度はどれくらいか

を評価します。
また、粘膜の一部を採取(生検)します。

便検査では、「便中カルプロテクチン」という項目を調べることで、腸の炎症の度合いを評価することができます。
また、サルモネラやカンピロバクターなどの血便をきたす感染性胃腸炎を除外するために使用されます。

潰瘍性大腸炎の方は自覚症状が安定していても、

  • 治療効果の判定
  • 大腸の炎症の評価
  • 大腸がんを合併しやすい

という理由から、年1回以上の定期的な大腸内視鏡検査が必要になります。
一方で、炎症が強い場合、大腸カメラを行うことで、どうしても痛みの訴えが出てくるケースが多くなります。

当クリニックでは、大腸カメラへの不安を少しでも解消するために、全例の検査において点滴での鎮静剤(静脈麻酔)を使用した大腸カメラ検査を実施しています。
また、鎮静剤の種類や量を患者様の年齢や体重、持病などを踏まえて調整しており、なるべく早く目覚めてお仕事や日常生活へすぐに復帰できるように工夫しています。
お気軽にご相談ください。

潰瘍性大腸炎の分類

潰瘍性大腸炎は病型と重症度から分類されます。
病型は大腸カメラを行うことで判断します。
重症度は症状、血液検査、大腸カメラの結果から判定します。
それぞれの病型・重症度によって治療の方針が異なります。
適切な治療を行うために、病型と重症度を正確に把握する必要があります。

1. 病型

病変は直腸から上のほう(口側)に連続的に広がっていくため、炎症の広がっている範囲によって、

  1. 全大腸炎型
  2. 左側大腸炎型
  3. 直腸炎型

の3つに分類されます。

2. 重症度

症状の強さ、炎症の強さから潰瘍性大腸炎は、
軽症、中等症、重症、劇症に分類されます。
頻度としては、
軽症の患者さんが60%以上、
中等症はおよそ30%、
重症および劇症は5%未満
とされています。

潰瘍性大腸炎の病型 潰瘍性大腸炎の重症度
炎症の広がっている範囲によって分類 症状の強さ・炎症の強さによって分類
以下の3つに分類
  • 全大腸炎型
  • 左側大腸炎型
  • 直腸炎型
以下の4つに分類
  • 軽症
  • 中等症
  • 重症
  • 劇症

潰瘍性大腸炎の内視鏡画像・所見

大腸カメラを行うことで、炎症の度合い・重症度を評価できます。
潰瘍性大腸炎である場合、大腸カメラで、以下のような特徴的な所見が認められます。
潰瘍性大腸炎の内視鏡所見:

  • 細顆粒状の粘膜
  • 白色・黄色の小粘膜欠損
  • 出血しやすい粘膜
  • びらんや潰瘍が連続している
  • 血管透見像の消失(大腸の粘膜の血管が見えなくなる)
  • 白苔(はくたい)や血性の分泌物が付着
  • 偽ポリポーシス(多発するびらん・潰瘍)

それでは、実際の内視鏡画像を見ていきましょう。

こちらは
軽症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像です。
盲腸に、小さな白い点状のもの(白色の小粘膜欠損)がみられ、そのまわりが炎症で赤くなっています。
部分的に血管が見えなくなっています(血管透見像の斑状消失)。

軽症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像

こちらも
軽症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像です。
直腸に小さな白い点状のもの(白色の小粘膜欠損)がみられ、そのまわりが赤くなっています。
部分的に血管が見えなくなっています(血管透見像の斑状消失)。

軽症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像

こちらは
中等症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像です。
白い領域の部分(白苔)がみられ、びらんを伴っています。
血がにじんでいる部分もみられます。
炎症が強く、血管は全く見えません(血管透見像の完全消失)。

中等症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像

こちらも
中等症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像です。
潰瘍性大腸炎で炎症が強くなることで、
大腸のヒダがなくなり、土管のように見えることが特徴です。
炎症が強く、血管は全く見えません(血管透見像の完全消失)。

こちらも中等症の潰瘍性大腸炎の内視鏡画像です。

※正常の大腸の内視鏡画像
大腸のヒダがしっかり観察されます

※正常の大腸の内視鏡画像

潰瘍性大腸炎の重症度判定

重症度は以下の6つの項目から評価します。

  1. 1日6回以上の下痢
  2. 多量の血便
  3. 37.5℃以上の発熱
  4. 脈拍  ≧  90 /分
  5. ヘモグロビン(Hb)≦  10 g/dl 
  6. 赤血球沈降速度(赤沈) ≧  30 mm/hr

これに該当する項目が多いほど、重症となります。
5・6 に関しては、採血(血液検査)をして評価する項目になります。
また、重症例のうち

  • 1日15回以上の血性下痢
  • 38℃以上の発熱の持続
  • 白血球(WBC) ≧ 10000 /mm3

を認める場合、「劇症」と定義されます。

潰瘍性大腸炎の治療

潰瘍性大腸炎は、寛解状態(症状がない状態)が長期間続くことはありますが、残念ながら、完治することはありません。
そのため、治療において重要なことは、
「症状が消失する寛解状態に導き、症状がない期間をなるべく長く維持していくこと」です。
潰瘍性大腸炎の治療には薬物治療に加えて、日常生活の改善が重要になってきます。

日常生活の改善だけで、症状がコントロールできるケースもあります。規則正しい生活を心がけましょう。
炎症が強く、内服薬・注射薬でコントロールが困難な場合には、外科的手術を検討する場合もあります。

1.内科的治療

潰瘍性大腸炎では、再燃や難治化を抑える確実な治療はないため、継続的な薬物療法が必要になります。
また薬物療法は、以下のの2種類があります。

①寛解導入療法
炎症が強い時期である活動期から寛解させる
②寛解維持療法
寛解してからその状態をキープしていく

約90%の方は、初回の薬物療法で寛解できるといわれています。
ステロイドが効きにくい症例(ステロイド抵抗例)では、サイトメガロウイルスやクロストリジウムの感染を合併している場合があるため、適宜、検査・治療を並行していきます。

具体的な薬物療法には、
①内服薬、②座薬、③注腸薬、④注射薬の4種類があります。
患者様の炎症の広がり具合や重症度に応じて、使用する薬を選択していきます。

潰瘍性大腸炎で使用する薬剤・治療法は以下の通りです。

  • 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤
  • ステロイド
  • 免疫調整薬
  • 分子標的薬
  • 血球成分除去療法

以下に治療薬の一覧をお示しします。

潰瘍性大腸炎の治療薬の一覧

潰瘍性大腸炎の治療薬の一覧

当院では、
5-ASA製剤(アサコール®、ペンタサ®、リアルダ®、サラゾピリン®)や、
ストロイド局所製剤(レクタブル®、プレドネマ®、ステロネマ®)による標準的治療以外に、
ステロイド・免疫調整薬・生物学的製剤・JAK阻害薬による寛解導入療法、寛解維持療法を行っています。

当院で治療可能な生物学的製剤
  • 抗TNF-α抗体製剤(レミケード®、ヒュミラ®、シンポニー®
  • 抗α4β7インテグリン抗体製剤(エンタイビオ®
  • 抗IL-12/23抗体製剤(ステラーラ®
  • JAK阻害薬(ゼルヤンツ®

これらの治療で寛解導入できたら、再燃を予防するために、 5-ASA製剤による寛解維持療法を長期間にわたって継続していきます。
状況によって免疫調節薬の長期維持投与、分子標的薬のスケジュール投与なども行われます。
重症例や劇症例では、入院の上、絶食・点滴管理を行うこともあります。
また、鉄欠乏性貧血を伴っている場合には、鉄剤の静脈注射を行います。

潰瘍性大腸炎で使用する漢方薬の一覧を以下にお示しします。

漢方薬の一覧

漢方薬 改善させる症状
五苓散 下痢、吐き気、胃腸炎
柴苓湯 下痢、胃腸炎、吐き気、食欲不振
人参湯 下痢、嘔吐、胃痛、胃炎

2.外科的治療

上記の内科的治療で効果が認められない場合(難治例)や、大腸に穴が開く、大量の出血がみられる、大腸がんを合併している場合などは、大腸を全て切除する外科的治療(大腸全摘出術)を検討することになります。
外科的手術で潰瘍性大腸炎の根治が期待できますが、術後に癒着に伴う腹痛や下痢、便秘などの便通異常が長く続くことがあります。

3.日常生活の改善

潰瘍性大腸炎の治療で重要なのは、
「生活習慣や食習慣の改善」です。
潰瘍性大腸炎を悪化させる生活習慣として、

  • ストレス
  • 暴飲・暴食
  • 不規則な生活
  • 睡眠不足
  • 慢性的な疲労

などがあります。

具体的な日常生活の改善方法として、

  • 十分な睡眠時間を確保する
  • 毎日適度な運動を行う
  • ストレスを適度に発散していく
  • アルコールの飲み過ぎに注意する

などが挙げられます。

寛解期でも症状を再発させないように、治療を継続することが大切です。
日常生活を過度に制限する必要はありません。

食習慣の改善

下痢や便秘の解消には、食事内容の改善が重要です。
食べてはいけないものはありませんが、腸にやさしい食品が望ましく、バランスのよい食事をとることが重要です。
活動期には、以下の点に気をつけましょう。

  • 低脂肪にする
  • 食物繊維・刺激物の少ない食事
  • 飲酒は控える
  • 生もの(お刺身)・お寿司は避ける

n-3系不飽和脂肪酸を多く含む魚(マイワシ、サンマ、マグロ、ハマチ、ブリなど)には炎症を抑える効果があるので、これらの焼き魚や煮魚がおすすめです。
また、青汁に含まれる「大麦若葉末」に潰瘍性大腸炎の炎症を抑える作用があるといわれています。
お菓子は、低脂肪・低残渣のものを食べるようにしましょう。
具体的にはビスケットや豆乳プリン、和菓子、鈴カステラ、キャラメル、グミなどがあります。
乳製品の制限はありません。
脂質の量に気をつけて、乳製品を摂取しましょう。

潰瘍性大腸炎の方におすすめの消化の良い食品の一覧は、以下のものになります。

おすすめの消化の良い食品の一覧

  通常時 調子のいいとき
主食 ご飯、お粥、うどん 食パン、パスタ など
白身魚(タラ、カレイ)、赤身魚(マグロ) 青魚(ブリ、サンマ、マグロ、ハマチ)、うなぎ
鶏肉 ささ身、胸肉(皮なし) もも肉(皮なし)
豚・牛肉 赤身肉、胸肉、ささみ 赤身(もも肉・ヒレ肉)、豚レバー
飲み物 青汁、りんごジュース
桃ジュース、野菜ジュース
スポーツドリンク
ココア

また、調理油は、n-3系を含む油(えごま油、しそ油)、n-6系を含む油(紅花油、大豆油、ひまわり油)をバランス良く摂取することが大切です。

潰瘍性大腸炎の方では、

  • 脂肪の多い食事
  • 消化しにくいもの
  • 食物繊維が多く入った食事
  • 香辛料などの刺激物

は、なるべく摂取を控えましょう。

食べてはいけないもの・注意するものの一覧

食べてはいけないもの・注意するものの一覧を以下にお示しします。参考に食事をご検討ください。

脂肪の多いもの 消化しにくいもの
刺激の強いもの
脂肪を多く含む食品
  • ウインナー、ベーコン、ハム、バラ肉
  • チーズ
  • 生クリーム、チョコレート、アイスクリーム
  • 菓子パン、調理パン など
消化しにくいもの
(食物繊維の多い食品)
  • たこ、イカ、貝類、くらげ、海藻 
  • ごぼう、たけのこ、れんこん、山菜、サツマイモ
  • きのこ類、こんにゃく類、豆類
  • パイナップル、梨(なし)、ぶどう など
脂肪を多く含む食事
  • カレーライス
  • グラタン
  • ハンバーグ
  • とんかつ
  • 唐揚げ
  • ハンバーガー
  • ピザ
  • ラーメン
  • 炒飯
  • パスタ など
刺激の強い食品
  • 唐辛子
  • からし、わさび
  • ペッパー
  • にんにく、しょうが
  • パクチー
  • バジル
  • シナモン
  • アルコール(お酒)
  • 炭酸飲料
  • コーヒー など

食事のレシピに関しては、「IBDステーション おなかに優しいおいしいレシピ」(https://www.ibdstation.jp/recipe/recipe.html)」にて、潰瘍性大腸炎の方に有用なレシピが多数掲載されてますので、ご参照・ご活用ください。

プロバイオティクスの有効性

「プロバイオティクス」とは、
腸内フローラのバランスを改善することによって、健康に好影響を与える生きた微生物と定義されています。
具体的には、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などです。
プロバイオティクスは、潰瘍性大腸炎の方の

  • ガス(おなら)の発生を減らす
  • お腹の張りの軽減
  • 下痢の改善
  • 免疫機能を高める

ことができるといわれています。
脂質も入っているため、極端に摂取し過ぎず、日々の食事にバランス良く取り入れましょう。

潰瘍性大腸炎と上手につきあっていくために

潰瘍性大腸炎を再燃させないためには、日常生活や食習慣の改善だけではなく、以下の点を考えていく必要があります。

運動に関して

病状が落ち着いていて、貧血や栄養状態の悪化などがなければ、適度な運動は行っても問題ありません。
症状がある場合は、そのときの状況に応じて、運動を制限する必要があります。
かかりつけ医とよく相談しながら、運動量を見極めましょう。

妊娠、出産に関して

潰瘍性大腸炎の女性の妊娠、出産は可能です。
ただし、妊娠、出産、授乳には服用しているお薬が影響を及ぼす場合があります。
また、妊娠は寛解期にすることが望ましいとされており、妊娠中も寛解の維持が重要とされています。
妊娠・出産を希望する際は必ず事前に相談しましょう。

内服薬に関して

潰瘍性大腸炎で飲んではいけない薬(禁忌)として、以下のものがあります。

  • 下痢止め(ロペラミド)
  • カロナール
  • ロキソニン・ボルタレン(NSAIDs)
  • アスピリン

下痢止めを飲むことで、命の危険に関わる合併症である「中毒性巨大結腸症」を引き起こす可能性があります。
また、カロナールやロキソニン・ボルタレンといった痛み止め(NSAIDs)、アスピリンは、症状の悪化を引き起こる恐れがあります。
持病があって上記の内服薬を飲まれている方は、必ず医師にご相談ください。 

まとめ

潰瘍性大腸炎は、1990年以降、日本で急激に患者数が増え続けている病気です。
平均寿命は一般の人と比べて変わりませんが、治療を施さなければ、どんどん悪くなっていきます。
また、大腸以外にも多くの臓器に合併症を引き起こします。
「血便や下痢が治ったと思ったら、また繰り返される」場合、潰瘍性大腸炎かもしれません。
血便や腹痛でお困りの方は、まずは専門科である当クリニックへお気軽にご相談ください。

参考文献:

胃と腸アトラスⅡ 下部消化管 第2版 医学書院
内視鏡診断のプロセスと疾患別内視鏡像-下部消化管 改訂第4版 日本メディカルセンター

最新ガイドライン準拠 消化器疾患 診断・治療指針 中山書店
日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2020(改訂第2版)
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/ibd2020.pdf#page=32
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和2年度 改訂版
http://www.ibdjapan.org/pdf/doc01.pdf
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識(第4版)
http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/01.pdf
日本消化器病学会 患者さんとご家族のための 炎症性腸疾患(IBD)ガイド
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/pdf/13_ibd.pdf
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 炎症性腸疾患患者さんの食事について Q&A
http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/06.pdf

難病情報センター 潰瘍性大腸炎(指定難病97) 病気の解説(一般利用者向け) 
https://www.nanbyou.or.jp/entry/62
武田薬品工業株式会社 IBDステーション IBD患者さんのためのたべものガイド おなかに優しいおいしいレシピ
https://www.ibdstation.jp/recipe/recipe.html

院長 鈴木 謙一(Kenichi Suzuki)

この記事の執筆者

院長 鈴木 謙一

略歴・役職

  • 埼玉医科大学医学部 卒業
  • 昭和大学横浜市北部病院消化器センター 助教
  • 山梨赤十字病院 消化器内科 医長
  • 磯子中央病院 内科(消化器内科) 医長
  • 2024年 横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院 開業

所属学会・資格

  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
  • 日本消化管学会認定 胃腸科専門医
  • 日本内科学会認定 認定内科医
  • 神奈川県横浜市指定 難病指定医
  • 日本ヘリコバクター学会認定 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本抗加齢(アンチエイジング)学会 会員
  • American Society for Gastrointestinal Endoscopy member
  • United European Gastroenrerology member