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性感染症(性病)

性感染症とは

性感染症とは、性行為・性的接触によって生じる感染症のことです。
症状は、尿道炎・膀胱炎が多いですが、精巣上体炎、直腸炎、びらん・潰瘍、下腹部痛、目の病気(結膜炎・ぶどう膜炎)などが生じます。

梅毒の感染者数は、過去最多ペースで増加しており、淋菌やクラミジアは、男女ともに継続的に多く、尿道炎・子宮頸管炎の原因の大半を占めています。
日本では、梅毒の増加、淋菌の薬剤耐性の問題など、性感染症に関する問題が数多くあり、患者数は高い水準で維持されています。

風邪を引いていないのに、喉の痛み、咳や痰が続くといった場合でも、性感染症が原因となっている可能性があります。
性感染症はご自身だけでなく、パートナーに影響を及ぼします。
また、妊娠中の女性が梅毒・カンジダ・クラミジアなどへ感染していると、生まれてくる大切な子供に感染させてしまうリスクがあります。

少しでも疑わしいエピソードや症状がある場合、医療機関へ受診して、検査を受けましょう。
当院では、性感染症の検査から治療までを一貫して行っています。

性感染症に関して、種類から治療法まで、認定内科医である院長が、分かりやすく・詳細に解説していきます。

性感染症の種類

性感染症の種類の一覧を、以下にお示しします。
大きく分けて細菌・ウイルス・原虫の3つに分けられます。

病原体 性感染症(STD)
細菌 ・梅毒
・淋病
・クラミジア
・マイコプラズマ・ジェニタリウム  など
ウイルス ・尖圭コンジローマ
・性器ヘルペス
・B型肝炎(HBV)
・C型肝炎(HCV)
・サイトメガロウイルス感染症
・AIDS (HIV)  など
原虫 ・尖圭コンジローマ
・性器ヘルペス
・B型肝炎(HBV)
・C型肝炎(HCV)
・サイトメガロウイルス感染症
・AIDS (HIV)  など

淋菌やクラミジアの検査をしても陰性なのに、排尿時痛や陰部に症状がある場合、マイコプラズマ・ジェニタリウムに感染している可能性があります。

性感染症の患者数

主な病原体である

  1. 梅毒
  2. 性器クラミジア
  3. 性器ヘルペス
  4. 尖圭コンジローマ
  5. 淋菌

の患者数の推移をお示しします。

梅毒は2016年頃から、急激に増加しています。
2022年は観測史上、はじめて1万件を突破し、過去最多を記録しており、今後も増加していくことが予想されます。

その他の性感染症では、性器クラミジア・淋菌がここ数年で微増しております。
性器ヘルペス・尖圭コンジローマは、横ばいです。
いずれの性感染症も、感染者数は高い水準で維持されています。
今後なんらかの要因がきっかけとなり、梅毒のように爆発的に患者数が増加する可能性は考えられます。

性感染症の症状

性病の原因となる主な病原体・潜伏期間・その病気の症状の一覧を以下にお示しします。

病原体 潜伏期間 主な症状
梅毒 10〜90日 ・陰部の固いしこり(痛みなし)
2〜12週 ・皮膚の湿疹(バラ疹)
・脱毛
・全身のリンパ節の腫れ
3年以降 ・体の痛み、歩行障害、感覚障害、難聴、人格変化など(神経梅毒)
・大動脈炎
・皮膚・肝臓・骨にコブ(肉芽腫)
淋病 2〜7日 尿道炎の症状:
・排尿時の痛み
・陰部の赤み・膿み
咽頭炎の症状:
・のどの痛み
・のどの違和感
・咳(せき)、痰(たん)
・微熱、発熱
子宮頸管炎の症状:
・おりものの増加
・排尿時の痛み
・性交時の痛み・出血
・下腹部痛
・不正出血  など
クラミジア 1〜3週間 尿道炎の症状:
・排尿時の痛み
・陰部の赤み・膿み
(淋病より軽症)
咽頭炎の症状:
・のどの痛み
・のどの違和感
・咳(せき)、痰(たん)
・微熱、発熱
子宮頸管炎の症状:
・おりものの増加
・排尿時の痛み
・性交時の痛み・出血
・下腹部痛
・不正出血  など
子宮内膜炎の症状:
・生理痛のような痛み
・発熱 など
尖圭コンジローマ 2〜3ヶ月 ・陰部周囲にブツブツしたイボ
・がん化(悪性化)することもあるため、要注意
ヘルペス 3〜7日 ・口内炎
・口唇ヘルペス
(唇や口の中が、むずむず・チクチクする)
・陰部に痛みのある潰瘍
・発熱
・股間のリンパ節の腫れ
(症状が強い)



性交後、主な性感染症(性病)が発症するまでの時間を以下にお示しします。

性感染症の検査・診断

性感染症を診断するために以下の検査を行います。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 患部から組織を採取(鏡検)
  • 膿みを採取(染色法)
  • 分泌液・おりものを採取(抗原検査)
  • 髄液検査(ヘルペス)
  • 大腸カメラ

疑われる性感染症によって、行う検査は異なります。
状況に応じて、これらの検査を組み合わせて、診断していきます。

大腸カメラで偶然に、尖圭コンジローマが見つかることがあります。
この場合、組織を採取(生検)を行うことで、診断を確定できます。
尖圭コンジローマは良性の腫瘍ですが、がん化(悪性化)することもあるため、注意が必要です。

尖圭コンジローマの内視鏡画像

 

近年、市販されている「性病の検査キット」が多くあります。
市販の検査キットで精度が高いと謳っているものも多く見かけますが、それでもまだ精度が悪く、偽陰性(本当は陽性なのに、陰性)となることが多くあります。

症状が続く場合や、心配な場合には、必ず医療機関へ受診しましょう。

性感染症の治療

検査を行って、病原体・病気が診断できた場合、抗生物質の投与を行っていきます。
病原体によって効果のある抗生剤が異なるため、しっかりと診断して、適切な抗生剤を使用することが重要です。

性感染症の病原体と使用する抗生剤の一覧を以下にお示しします。

病原体 使用する抗生物質 (一般名) 投与期間
梅毒 ・アモキシシリン 4週間
・ミノサイクリン 4週間
・スピラマイシン 4週間
淋病 ・セフトリアキソン(点滴) 1回のみ
・スペクチノマイシン(筋注) 1回のみ
・アジスロマイシン 7日間
クラミジア ・ミノサイクリン 7日間
・ドキシサイクリン 7日間
・レボフロキサシン 7日間
・アジスロマイシン 1日間
・エリスロマイシン 7日間
・クラリスロマイシン 7日間
尖圭コンジローマ ・イミキモド(軟膏) 週3回、 4週〜16週間
性器ヘルペス ・アシクロビル 5〜10日間
・バラシクロビル 5〜10日間
・ファムシクロビル 5〜10日間
マイコプラズマ・ジェニタリウム ・シタフロキサシン
※薬剤耐性を疑う場合、適宜薬を変更
7日間

性感染症の治療においては、パートナーの治療も重要です。
梅毒は患者様のステージ(第1〜3期)によって、投与期間が異なるため、注意が必要です。
淋病では、ペニシリンやレボフロキサシンなどの抗生剤は、耐性が増加しているため、投与は控えたほうがよいとされています。
マイコプラズマ・ジェニタリウムも、薬剤耐性が問題となっており、薬の効果を見て適宜、調整が必要となります。
尖圭コンジローマは、軟膏以外に凍結療法、電気焼灼、レーザー、外科的切除といった治療があります。

料金表(自費診療)

料金表(自費診療)

性病検査セット 検査料金 (税込)
梅毒(RPR・TPHA)、HIV(抗原・抗体)、淋菌、クラミジア、B型肝炎(抗原) 9,800円

※淋菌・クラミジアは尿検査(男性)もしくは膣擦過物検査(女性)です。
 その他の感染症は、血液検査になります。

各種検査項目(自費診療)

病原体 検査料金 (税込)
B型肝炎
(HBs抗原、HBs抗体)
3000円
C型肝炎(HCV抗体) 3000円
梅毒(TPHA + RPR) 3000円
HIV(HIV抗原・HIV抗体) 3000円
ヘルペス(HSV IgG抗体) 3000円
カンジダ(抗原) 3000円

性感染症になったら

性感染症になったら、必ずパートナーにも検査を勧めましょう。
過去60日以内に性的接触をもったパートナーは、検査が推奨されます。

梅毒や尖圭コンジローマなどは、潜伏期が非常に長く、無症状で体内に潜伏している可能性があります。
そのため、パートナーが検査で陰性であっても、定期的に検査を行う必要があります。
なにか気になることや、心配なことがあれば、当院へお気軽にご相談ください。

参考文献:

日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン 2020 診断と治療社
梅毒のみ
http://jssti.umin.jp/pdf/baidokukaikou_20230620.pdf

厚生労働省 性感染症報告数(2004年~2021年)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html
NIID 国立感染症研究所 日本の梅毒症例の動向について
https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-idwrs/7816-syphilis-data-20180105.html

院長 鈴木 謙一(Kenichi Suzuki)

この記事の執筆者

院長 鈴木 謙一

略歴・役職

  • 埼玉医科大学医学部 卒業
  • 昭和大学横浜市北部病院消化器センター 助教
  • 山梨赤十字病院 消化器内科 医長
  • 磯子中央病院 内科(消化器内科) 医長
  • 2024年 横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院 開業

所属学会・資格

  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
  • 日本消化管学会認定 胃腸科専門医
  • 日本内科学会認定 認定内科医
  • 神奈川県横浜市指定 難病指定医
  • 日本ヘリコバクター学会認定 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本抗加齢(アンチエイジング)学会 会員
  • American Society for Gastrointestinal Endoscopy member
  • United European Gastroenrerology member