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睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中、1時間に「10秒以上の無呼吸となる回数が5回以上」起こることで、いびきや日中の眠気・頭痛・集中力の低下などを引き起こす病気です。
最大の原因は「肥満」であり、高血圧、糖尿病といった生活習慣病と強い関わりがあります。
睡眠障害のなかで最も頻度が高く、CPAP療法を行っている方の半数以上は、10〜50歳代と若い方に多い病気です。

最近、「いびきがうるさいと指摘される」、「夫のいびきが気になる」ということはありませんか?
睡眠時無呼吸症候群は、日本で50万人以上いるといわれ、男性に多い病気です。
日中に居眠りをしてしまうだけでなく、心筋梗塞や心不全を合併しやすく、命に危険を及ぼす可能性があるため、適切な治療を行う必要があります。

治療を行うことで、日中の眠気、頭痛、集中力の低下といった症状の改善が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群であると思っていたけど、「肺胞低換気症候群」という難病と診断されるというケースも稀にあります。

睡眠時無呼吸症候群に関して、原因から治療法まで、認定内科医・難病指定医である院長が、分かりやすく・詳細に解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因には、以下のものがあります。

  • 肥満
  • 男性
  • アデノイド
  • 下顎発育不全

睡眠時無呼吸症候群の最大の原因は「肥満」です。
体重が10%増加すると、中等症の睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクは6倍になるといわれています。
男性は、女性に比べて、2〜3倍頻度が高くなるといわれています。
女性でも閉経後に睡眠時無呼吸症候群になりやすくなります。

「アデノイド」とは、鼻の奥にできるリンパ組織のかたまりで、急性中耳炎・鼻閉の原因にもなります。
日本人は、生まれつき下アゴ(下顎)が後退していることが多く、これが睡眠時無呼吸症候群の原因となります。

そのため、肥満体型や男性でなくても、

  • 生まれつき下アゴが小さい場合
  • アデノイドがある場合

に睡眠時無呼吸症候群を引き起こすため、注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時、昼間にそれぞれ以下のような症状が引き起こされます。

睡眠時にみられる
症状
昼間にみられる
症状
・いびき
・睡眠中の窒息感
・睡眠中に呼吸が荒くなる
 (あえぎ呼吸)
・睡眠途中で起きてしまう
・寝相が悪い
・睡眠途中で尿意を催す
・眠くなる
(居眠りしてしまう)
・起床後の頭痛
・集中力の低下
・疲労感
・だるさ

睡眠時無呼吸症候群の症状チェックリスト

こちらの睡眠時無呼吸症候群を疑うチェックポイントに該当する項目がないか、セルフチェックしてみましょう。

日中に眠くなることで、

  • 居眠り運転をしてしまったことがある
  • 電車を乗り過ごしてしまったことがある
  • 昼間に居眠りばかりしてしまう

このような症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
上記を認める場合、なるべく早めに内科を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の検査・診断

以下の条件に該当する場合、睡眠時無呼吸症候群症候群と診断します。

睡眠中の1時間あたりの

  1. 10秒以上の無呼吸の回数
  2. 3%以上の酸素飽和度(SpO2)の低下
  3. 睡眠途中で起きる回数

の総数が5以上で、日中の症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群と診断できます。

この①〜③の総数のことを、無呼吸低呼吸指数(AHI)といいます。
AHIの数値によって、以下のように睡眠時無呼吸症候群の重症度が決定します。

無呼吸低呼吸指数(AHI) 重症度
5〜14  軽症
15〜29 中等症
30以上 重症

自覚症状がなくても、AHIが5以上の場合、「睡眠呼吸障害」と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群の診断・重症度を評価するために、以下の検査を行います。

  • ご自宅での簡易検査(PG)
  • 終夜睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)
  • 経鼻内視鏡(胃カメラ)
  • Epworthの眠気テスト(質問票)

自宅での簡易検査(PG)


当院のPG検査(簡易検査)は、検査機器がご自宅へ配送され、ご自宅で行なえます。
ご自宅で簡易検査を使用することで、無呼吸低呼吸指数(AHI)を簡単に測定できて、コストも低く抑えられます。


簡易検査で診断が確定できない場合、PSGでAHIを正確に測定します。
また、鼻から行う胃カメラを行うことで、アデノイドの有無を評価することが可能です。
Epworthの眠気テストのような質問票を用いた評価・問診もありますが、診断精度が低いと言われています。

睡眠時無呼吸症候群の合併症

睡眠時無呼吸症候群が続くことで、以下の合併症が引き起こされます。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈(心房細動)
  • 心不全
  • 狭心症・心筋梗塞
  • 多血症
  • 脳梗塞・くも膜下出血
  • 腎不全  など

無呼吸で酸素が取り込まれないことで、さまざまな合併症が引き起こされます。
特に心不全は、睡眠時無呼吸症候群によって発症し、心不全が睡眠時無呼吸症候群を悪化させるという悪循環を生じます。
脳梗塞の急性期の患者様の20〜25%で、睡眠時無呼吸症候群を認めると報告されています。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療には、①生活習慣の改善、②内科的治療、③外科的治療の3つがあります。

1.生活習慣の改善

内科治療と並行して、生活習慣の改善を行うことは極めて重要です。
以下の点に注意していきましょう。

  • 体重の減量(ダイエット)
  • 節酒(お酒を飲みすぎない)
  • 横向きで寝る

体重が減少することで、無呼吸の改善が期待できます。
肥満が原因で睡眠時無呼吸となっている場合、ダイエットで自力で治すことが期待できます。
また、アルコールを飲み過ぎや仰向けで寝ることで、舌が喉に落ち込みやすくなるため、無呼吸が生じやすくなります。
飲酒は適度・適量にしましょう。
寝方としては、横を向いて寝るように心がけましょう。

2.内科的治療

睡眠時無呼吸症候群の内科的治療には、以下のものがあります。

  • nasal CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)
  • OA(口腔内装置)
  • 点鼻薬

睡眠時無呼吸症候群と診断した場合、まずは鼻からのCPAP(nasal CPAP)を導入します。
nasal CPAPを行うことで、ほぼ完全に無呼吸を防止することができます。
nasal CPAPの継続が困難な場合、口につける装置であるOAを使って、治療を行います。

当院のCPAPは、検査機器がご自宅へ配送され、ご自宅で行なえます。

nasal CPAPの動画

nasal CPAP・OAを行うことで、以下の効果が期待できます。

  • 夜間・日中の症状の改善
  • 高血圧の改善
  • 狭心症・心筋梗塞の発症リスクの低下

なお、高血圧の改善、狭心症・心筋梗塞を低下させるためには、1回4時間以上のCPAPが必要です。

点鼻薬を併用することで、鼻閉が改善し、日中の症状の改善が期待できます。

3.外科的治療

内科的治療で改善が見込めない場合、手術を行うことで症状改善が期待できます。
具体的には、アデノイド切除や、小児で行われる口蓋扁桃縮小術、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術などがあります。

睡眠時無呼吸症候群の注意点

「日中の眠気があり、夜はなかなか寝れない」という理由で、睡眠時無呼吸症候群の患者様で、睡眠薬を使用される方がいます。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の方で睡眠薬を内服するのは注意が必要です。

睡眠薬を飲んでしまうことで、

  • かえって夜間の無呼吸の回数が増えてしまう
  • 日中の症状が悪化する

ことがあるためです。

睡眠時無呼吸症候群の方は、まずCPAPを行うことが優先されます。
それでも十分な睡眠が得られない場合に、睡眠薬による治療が行われますが、慎重に行っていく必要があります。
症状でお悩みの方は、まずは内科を受診しましょう。

まとめ

食の欧米化、運動不足が進んできていることから、睡眠時無呼吸症候群は増加傾向にあり、今後も増えていくことが予想されます。
睡眠時無呼吸症候群で、毎日、眠気や寝不足で悩まされ、日常生活の質が低下します。また、普段から車を運転される方は、特に注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群の方で、運転事故リスクが上昇するだけでなく、命を落とすケースもあります。
一方で、CPAPを行うことで、居眠り運転がなくなり、日常生活の質が改善します。早期の診断・治療を受けるようにしましょう。
何かお困りの場合、お気軽に当院へご相談ください。

参考文献:

日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 睡眠時無呼吸
https://www.jibika.or.jp/modules/disease_kids/index.php?content_id=22

院長 鈴木 謙一(Kenichi Suzuki)

この記事の執筆者

院長 鈴木 謙一

略歴・役職

  • 埼玉医科大学医学部 卒業
  • 昭和大学横浜市北部病院消化器センター 助教
  • 山梨赤十字病院 消化器内科 医長
  • 磯子中央病院 内科(消化器内科) 医長
  • 2024年 横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院 開業

所属学会・資格

  • 日本消化器病学会認定 消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
  • 日本消化管学会認定 胃腸科専門医
  • 日本内科学会認定 認定内科医
  • 神奈川県横浜市指定 難病指定医
  • 日本ヘリコバクター学会認定 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本消化器内視鏡学会認定 大腸内視鏡スクリーニング認定医
  • 日本抗加齢(アンチエイジング)学会 会員
  • American Society for Gastrointestinal Endoscopy member
  • United European Gastroenrerology member